日本料理店経営
砂澤 きよみさん(64)

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「縁(えにし)」の心、福知山からパリへ

 「地域の人々が出会い、つながり合うような雑誌に」。創刊前に情報誌のタイトルを決める社内公募があり、その時に私が考えた名前が、巡り合わせを意味する「縁」でした。ご存じのとおり、採用には至りませんでしたが、創刊から10年、私はラサンカを通じ多くの人たちとつながり合うことができました。編集室を去り10年。長女と一緒にパリで日本料理店「縁」を開業して、もうすぐ9年目を迎えます。
 パリ行きを反対する夫と息子を説得し、貯蓄を切り崩しスタートした開店準備。家庭教師に仏語を学びながら試行錯誤した日々。何もかもが日本と違い、驚きの連続でした。そんなパリでの生活については、4年前、ラサンカの企画でも紹介させて頂きました。連載を読み、パリを訪れた際に、「縁」にお立ち寄り頂いた方もあり、ラサンカの影響力の大きさも実感しました。
 その後の大きな変化は治安でしょうか。2015年11月13日夜。週末ということもあり、店内は満席。そんな中、天ぷらに箸を付けようとしたある女性客が、届いたメールを見たとたん、帰り支度を始めたのです。私たちが「料理が遅くて、怒った?」と心配している間に、他の客も次々席を立ち、15分後には誰もいなくなりました。パリ同時多発テロの発生。WEBサイトで事件を知り、身近で起きている現実に愕然としました。
 テロ以降、2カ月ほどは外食を控える傾向にありましたが、徐々に観光客も戻り、「縁」にも常連客らが顔を見せるようになりました。
 現在も現地でラサンカの会員メールを受信しており、表紙や企画などを定期的にHPで見ています。福知山にいる息子がバックナンバーを置いてくれているので、帰国したら読み、特にグルメ関係の特集は外食時の参考にしています。今のラサンカは、若い読者向けの企画は多いと思いますが、今後、期待するのは、私たち世代が楽しめるような旅行の企画。私自身、かつてラサンカの誌面に載ったスイスの風景写真に心を奪われた経験があります。「いつかここに行こう」と心に決め、実際、数年前に実現できました。国内でも海外でも、1枚の写真や記事が新たな旅へのきっかけを作る。そんなページがあれば素敵ですね。20周年を迎えたラサンカに、これからもパリからエールを送り続けたいと思います。



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